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京都府立大学からのお知らせ

分布拡大中のシジミチョウ,北限域では天敵を振り切る:ムラサキシジミに見る天敵昆虫の地理的相違


京都府立大学生命環境科学研究科 准教授大島一正、同研究科所属 中林ゆい は、
ムラサキシジミの分布の地理的相違について明らかにしました。
本研究は、2023年8月28日(月)[英国時間]に雑誌「Biological Journal of the Linnean Society」にて発表されました。

■研究成果の概要
すべての生物はほかの生物と多様な種間関係を持ちながら生活していますが、気候変動等が原因である生物種の分布域が広がると、分布の変遷に伴い種間関係も変化してしまいます。そのため、分布の変遷に伴い種間関係がどのように変化するのかを明らかにすることは、気候変動等が生物にもたらす影響を把握する上でも重要な課題です。

本研究では、現在分布を北上させている蝶の1種であるムラサキシジミに着目し、従来の分布域と侵入先とで幼虫期の寄生者相を比較しました。その結果、従来の分布域では主に1種の寄生蜂に高確率で寄生されていたのに対し、分布北限では全く寄生されていませんでした。そこで、ムラサキシジミ幼虫が分布北限で寄生者から逃れられている要因を調べた結果、寄生蜂の分布の広がりはムラサキシジミよりも緩やかであることが明らかになった。

これらの結果より、1.分布北限にはムラサキシジミを利用する寄生者が不在である、2.ムラサキシジミの分布の急拡大に従来の寄生者が追いつけていない、という2つの要因により、ムラサキシジミ幼虫は分布北限では寄生者を回避できていると考えられます。

■論文情報
発表雑誌: Biological Journal of the Linnean Society
論文タイトル:Geographical variation in parasitoid communities and the cause of enemy-free space in a range-expanding myrmcophilous lycaenid butterfly
著者:Yui Nakabayashi*, Issei Ohshima (*責任著者)
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